電子書籍の収入と確定申告

 

Amazonや楽天などに電子書籍を出版して収入を手に入れ始めると、少しずつ気になってくるのが確定申告のことではないでしょうか?

確定申告は、会社員の方であれば、給料以外から年間20万円以上の収入があればおこなわなければなりません。

この情報はいろんなサイトでもよく載っていますが、じゃあ20万円未満なら黙っておけばいいのかと言うとそうではありません。実はこの20万円ルールは所得税、つまり国税に対するものであって、1円でも収入があれば、住民税の申告はしなくてはいけません。

話を所得税に戻しますが、電子書籍の出版で年間20万円以上というのは、ある程度売れる本、もっと言えば、1日に1冊売れる本を3冊出版したら、軽く年間20万円は収入が入ってきます(詳しくはこちらのシュミレーションページを見てください)。

週に1冊売れる本を20冊出版しても同様です。ですから、所得税の確定申告をしなければいけないレベルと言うのは、それほど高いハードルではないと言えます。

 

電子書籍の収入は変動が激しい

 

上記の20万円ルールは当然電子書籍の販売によって手にした収入に対しても適用されます。しかしここで、作家たちの困った事情が浮き彫りになります。

電子書籍に限らず、本の出版により手に入れる収入のことを、一般的に印税といいます。この印税ですが、とても変動が激しく不安定なのです。会社員が毎月決まった額の給料をもらうのと違い、作家生活というのはかなり不安定な収入の上に成り立っているのです。

例えば、5年前にミリオンセラーを記録した本があったとします。ミリオンセラーと言ったら、作家は少なくとも1億は稼いでいます。そして、住民税と合わせてその50%以上は税金で持っていかれます。

しかし、その翌年はその本は、前年の10分の1も売れないのが一般的でしょう。要はブームが去ったのです。すると、作家の収入も当然10分の1以下になります。もちろん村上春樹のように、出す本出す本大売れすれば話は別ですが、たいていの作家は数年に1度、または一生に1度大当たりのミリオンセラーがでるかどうかなのです。

そう考えると、ただでさえ不安定な印税生活を送っている作家たちに対して、たまに出た大当たりの印税の50%を税金でとっていくと言うのはあまりにもかわいそうな話と言うことになります。

そこで、作家たちの印税には、会社員の給料とは別の計算方法で税金額を計算してあげようと言うことになりました。この特殊な計算方法により課税することを平均課税といいます。

 

平均課税の適用条件

 

ちなみに、平均課税が適用されるのは印税だけではありません。平均課税に該当する収入は大きく分けて「変動所得」と「臨時所得」の2種類があります。

漁業や養殖による所得、原稿料、印税、著作権料などの事業所得や雑所得に分けられるものを、「変動所得」といい、契約金や不動産の権利金などの対価、公害の保証金などが「臨時所得」になります。ここで言う契約金とは、例えばプロ野球選手が受け取る契約金などです。

以上の収入がある人のうち、以下の2点に該当すれば平均課税が適用できることになります。

1.変動所得と臨時所得がその年の総所得の20%以上

2.過去2年の間に変動所得と臨時所得があった場合、その2年分の変動所得と臨時所得の50%が、その年の変動所得以上

つまり、変動所得や臨時所得が収入全体に占める割合がある程度あり、なおかつ、ここ2年間の変動所得や臨時所得の収入よりも今年が増えている場合にのみ適用されるというわけです。無名作家が突然ミリオンセラーを出して大当たりしたら、当然ほぼ全額が平均課税の適用を受けられることになります。逆に毎年ベストセラーを出し続けている作家は、実は平均課税が適用されていない可能性があるわけですね。

 

平均課税の計算方法と計算例(簡易版)

 

じゃあその平均課税と言うやつで、いったいどれだけ節税できるのか気になるところですよね。そこで実際の計算方法と計算例についてご紹介したいと思います。

まず、超ざっくり言ってしまうと、本来の所得金額がその5分の1だった場合に算出される税率で本来の所得金額を掛け合わした額が納税額と言うことになります。

例えば、変動所得が1000万円あったとします。話を単純化するために、それ以外の収入はなかったものとします。本来ならば1000万円の収入に対しては所得税率が33%かかるため、納税額は330万円になります。実際には控除額などありますが、ここでは無視して話を進めます。

この、変動所得1000万円を平均課税で計算するとどうなるのかというと、まず1000万円を5分の1します。200万円になりますね。200万円の所得税率は10%です。この10%を当初の所得額である1000万円に掛けると100万円になります。これが平均課税で計算した場合の納税額になります。

なんと330万円が100万円になってしまいました!3分の1以下です。これが平均課税のすごいところなんです!

というところで、ざっくりした計算方法と計算例は終わりにして、ここからは本格的な計算方法と計算例をご紹介します。ざっくりとだけ理解したかった人はここまででOKです。もっと詳しく知りたい、実際の計算例、記入例を知りたい人は続きを読んでください。

かなり分かりにくいかもしれませんが、実際に確定申告をおこなう場合は、この通りに計算しないといけないので、ぜひ頑張ってついてきてください。

 

平均課税の計算方法と計算例(フル版)

 

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まず、国税庁の出している変動所得・臨時所得の平均課税の計算書をご覧ください。こちらに画像も載せておきます(クリックで拡大します)。基本的にはこの用紙に必要事項を記入して、実際に確定申告を行うことになりますので、この用紙をベースにして説明していきます。また、ここではいったん、臨時所得はなく、変動所得のみの場合で計算したいと思います。

 

最初に、平均課税として計算しても良い所得額を割り出していきます。

1:1番上の「変動所得」の枠内のⒶ収入金額に変動所得の合計額、つまりは、その年の印税額の全額を記入します。

例:12,000,000

2:その隣のⒷ必要経費に印税収入を売るためにかかった経費(表紙作成代、Epub作成代など)を記入します。印税収入とは関係ない経費を書かないように気を付けてください。

例:2,000,000

3:必要経費の二つ右隣にある所得金額欄に、先ほどのⒶからⒷを引いた金額を記入します。

例:10,000,000

4:その金額をそのまま①に記入します。

例:10,000,000

5:前々年の変動所得の金額(2年前のこの計算書で①に記入した金額)を⑤に書きます。2年前に変動所得が無ければ0になります。

例:0

6:前年の変動所得の金額(1年前のこの計算書で①に記入した金額)を⑥に書きます。1年前に変動所得が無ければ0になります。

例:0

7:⑤と⑥の平均額を①から引いた金額を⑦に記入します。

例:10,000,000

この⑦に書かれた金額が、平均課税対象金額です。これ以外の所得金額は通常の税額計算で納税額を計算します。

 

次に、平均課税で計算するといくらの納税額になるかを計算します。

8:⑦の金額をそのまま⑧に記入します。

例:10,000,000

9:確定申告書Bの㉖に記入した金額を⑨に記入します。この金額は、給与所得や変動所得の全額から、全経費や所得控除などを差し引いた金額です。ここでは変動所得以外の収入がない場合を例に計算しています。

例:10,000,000

10:⑧×0.8を⑨から引いた金額を⑩に記入します。ここでは、⑨の金額が⑧の金額を超えている場合を例に計算しています。

例:2,000,000 (1000万ー1000万×0.8)

11:⑨-⑩を⑪に記入します。

例:8,000,000 (1000万ー200万)

12:⑩に対する税額を⑫に記入します。

例:102,500 (200万×0.1ー97500)百円未満切り捨て

13:⑫/⑩×100を⑬に記入します。

例:5 (19万/200万×100)小数点以下切り捨て

14:⑪に⑬を掛けた金額を⑭に記入します。

例:400,000 (800万×0.05)

15:⑫+⑭を⑮に記入します。

例:502,500 (102,500+40万)

この⑮を確定申告書Bの㉗に記入して、平均課税にかかる作業は終わりとなります。実際の確定申告の際には、この変動所得・臨時所得の平均課税の計算書を添付して提出することになります。

とういことで、今回の計算例では最終的な納税額は約50万円となりました。ちなみに、所得が1000万円の場合の実際の納税額は約176万円ですので、だいたい3分の1くらいに納税額が減額されることになります。

1000万円の収入に対して税率が5%ってすごいですよね!

これが平均課税のインパクトです。

ちなみに今回は、変動所得以外の所得がないこと、前年や、前々年の変動所得がないことを前提に計算例を示しましたが、これらがあると計算がもっと複雑になることは分かっていただけると思います。

初めて平均課税を使った確定申告をする際は、できれば税務署の人の指導を受けながら手続きされた方が良いかもしれません。

 

平均課税にデメリットはない

 

平均課税は計算はとても複雑ですが、それ以上に得られるメリット、節税額は莫大です。もちろん平均課税を使わずに確定申告することもできると思いますが、納税額が増えるだけです。

ということで平均課税にあえてデメリットがあるとすれば、それは手続き、計算が複雑という一点です。

それと、注意しなければならないのは、平均課税は住民税には適用されません。住民税は給与所得と変動所得などすべての所得から経費や所得控除を引いた額の全額に10%をかけて計算されます。平均課税のような抜け道はないのでご注意ください。

 

所得税と平均課税の計算表をプレゼント!

 

最後になりますが、所得税と平均課税の速算表を作りましたので、欲しい方には無料でプレゼントしたいと思います。

 

平均課税計算(エクセル)

 

所得に応じた通常の課税額と、平均課税で計算した場合の税額が簡単に分かるようになっています。表内の数字の単位は万円だと思ってください。

もし何か間違いがありましたらお知らせください。ぜひご参考までに。

ということで今回は、電子書籍の出版で儲かった場合に使える平均課税についてご紹介しました。次回は、源泉徴収についてお伝えしたいと思います。